妃候補なんて興味ありません!
木製の箱の中には最近ここへ運び込んだばかりなのか、新鮮なトマトがあった。
「素敵!」

真っ赤に熟したおいしそうなトマトを手に取り、思わず声を上げる。
その声に数人の姫君たちが振り向いたけれど、すぐに視線をそらせた。

10番目姫君のことなんて、ほとんど誰も気にしていない。
シーラはそんなことおかまいなく竈の掃除を始めた。

少しホコリが積もっているけれど、ここも定期的に掃除されているようで、すぐに使うことができそうだ。

「シーラ様、なにをするつもりですか?」
心配して声をかけてきたのはもちろん侍女のリュナだ。

「トマトと豆のスープを作るのよ。地下室は少し肌寒いでしょう? 長時間ここにいればきっと温かいものが欲しくなると思うの」

「それなら私が作ります!」
慌てて鍋の準備をするリュナに「それなら、お手伝いをお願いできる?」と、シーラは言ったのだった。
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