妃候補なんて興味ありません!
鍋の中を覗き込んで珍しそうな顔をしている。
「シーラ様は普段から料理をなさるの?」

「そうですわ。刺繍も舞もできないけれど、料理だけは好きだったんです」
「へぇ……」

炊事場へ出入りする姫を見るのは珍しいのだろう、リディアはさっきからシーラを観察するように見つめている。

「8番と10番の姫君よ。最底辺同士仲が良くってね」
そんな声が聞こえてきてリディアは顔を伏せた。
だけどシーラは笑みを絶やさない。

このくらいの陰口はここへ来てからは日常的なものになっていたから、いちいち反応してやる暇はない。

「さ、あんな人達のことは気にせず沢山食べてね」
シーラはわざと聞こえるような大きな声でそういったのだった。
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