妃候補なんて興味ありません!
フィリップ王子1人でどうこうできるものではなかった。

最初は優勢を保っていたフィリップ王子だけれど、すぐに劣勢状態へと持ち込まれてしまった。

「ここは俺が囮になる。その間に地下室まで走るんだ!」
「でも、リディア様が……」

座り込んだリディアはまだ立ち上がることができないでいる。
腰が抜けてしまったリディアと共に地下室まで走るのは無理があった。

かといってここで放置して1人だけ逃げるわけにはいかない。
シーラは覚悟を決めて赤い兵士たちを睨みつけた。

「フィリップ王子様、ここは私がどうにかします。リディア様と共に地下室へ逃げてください」

姫君からの信じられない申し出にフィリップ王子は目を見開いた。

ここは自国であるのに、王子である自分が姫君を置いて逃げるなんて考えられないことだった。

それでもシーラの意思は強い。
一歩も引かないことがわかった。
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