妃候補なんて興味ありません!
他にできるものがないから、料理をまずいを言われたらどうしようかと思っていたのだ。
「あれから姫君たちから不愉快な思いをさせられていないかい?」

突然の言葉にシーラは戸惑いの表情を浮かべた。
フィリップ王子がこうしてシーラにだけ特別な会話をしてくるとは、思っていなかった。

「大丈夫です。なにもありません」
その言葉にフィリップ王子がふぅとため息を吐き出す。

「俺がなにも知らないと思ったか? 城内で起こっていることは、だいだい把握している。それに、お礼の品も受け取らなかったようだが」

「も、申し訳ありません! あんなに高価なものを異能持ちの私が受け取ることはできなくて……」

慌てて頭を下げる。
お礼の品を受け取らなかったのはそれが礼儀だと思ってのことだ。

だけどそれがフィリップ王子の癇に障ったのだとすれば、失敗だ。
「あれは俺が見立てたのだぞ。きっと、金髪の君に似合うと思って」

「え……?」
顔を上げると伸ばされてきた手がシーラの髪の毛をふらりとなでた。
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