妃候補なんて興味ありません!
それがくすぐったくてシーラは身悶えする。
「わ、私のためにフィリップ王子が選んで?」
「そうだ。この城に少しでも長くいてほしくてな」

そういうフィリップ王子の頬が少し赤いのは見間違いだろうか。

「あの出来事があってからしばらく君のことを観察させてもらった。姫君たちからなにを言われようとも毅然とした態度を崩さないのも見てきたし、同じような陰口を叩き返すようなこともなかった。君は強くて優しいのだな」

その言葉に周囲の姫君たちがざわめいた。
後方でシーラを見守っていたリュナとリディアが同時に両手で口元を覆った。

今の発言はまるで求愛だ。

「嫌なことをやられて、それをそのまま返すのはあまりにも心が幼い証拠です。それに私には強い異能があります。弱い姫君たちを攻撃しないように注意しています」

自分も本来の強さを隠し、自分を蔑みバカにする人間を守っている。
それはフィリップ王子の心を強く打った。

フィリップ王子が求めていた妃はまさにそういう心の強さを持った女性だったのだ。

シーラは料理しか取り柄がないと思っているようだけれど、この中の誰も持っていない心を持っている。
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