妃候補なんて興味ありません!
それはシーラが異能を使ったことで更に確定的なことになった。
姫君たちはみんなそう思っていたのだ。

「それなら聞く! また同じように敵軍が攻め入ってきたとき、他の姫君たちは今回のような対応ができるのか!?」

フィリップ王子の大きな声が会場内に響き渡る。
その怒号にも近い声に誰もが黙り込んだ。

「異能を持てという話ではない。地下室にいたとき全員に暖かなスープを振る舞う、そういう心使いができるのかと質問している!」

それにも誰も答えなかった。
あの地下室の中で他者のことを考えて動いたのはただ1人、シーラだけだったのだから。

「俺はシーラの異能を使うために妃に選んだのではない。その異能がほしいだけなら、今すぐ牢屋へ入れて飼い馴らせばいいだけだ」

フィリップ王子が言う通りだった。
シーラの国でも、処刑されずに済んだだけ良かったと思うことだろう。

「シーラ」
フィリップ王子がシーラに右手を伸ばし、シーラはそれをおずおずと掴んだ。
アルバンが白い布がかかったトレイを持ってくる。
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