【短】卒業〜各務昴の場合〜

執着

彼女が3年生になりいよいよ研究も本格化してきた。
そうなると自然と一緒の時間も増える。
彼女の人となりもだいぶわかってきた。
まず、彼女は群れる事が好きじゃないらしい。女子特有の集団行動を取ろうとしない。研究室でも1人でいる事が多く、話しかけられても必要最低限の言葉しか交わさない。
かと言って他の人間に興味がないのかというとそうでもない。周りをよく観察している。距離を置いた上で、相手に適したサポートを誰にも気づかれずにさりげなくしている。
それなのに冷たい人だと誤解されやすいのは、彼女が口下手なことが原因だろう。普段から口数の少ない彼女だが、言いたい事はオブラートに包まずストレートに表現する。よく言えば素直、悪く言えば辛辣だ。言葉を取り繕うこともしない。だが決して相手を傷つけたい訳ではない。圧倒的に言葉が足りないのだろう。会話が下手くそとも言う。
そんな飄々としているように見える彼女だが、自尊心は低く自己肯定感も低い。2人きりの時間を積み重ねる毎にそれは感じるようになった。身体だけの関係を許容しているのもその為だろう。行為の最中にも俺に言われるがまま俺の要求は当然のように受け入れる。一度彼女はどこまで許すのか試した事がある。人間の尊厳を奪い彼女を辱める行為を口にする俺に、彼女は顔色一つ変えず行動に移そうとした。それは俺を想って故ではないだろう。彼女が自分自身を侮っているのだ。

誰よりも不器用で、臆病で、自分に自信がない彼女のことが心底愛おしい。

何が彼女をそうさせるのか。全ての憂いを取りのぞき、俺の腕の中で安堵の表情を浮かべさせてやりたい。彼女への気持ちは日々増すばかりだ。
もうこの頃には、彼女への気持ちは恋情をはるかに超えて執着と呼べるものになっていた。
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