火の中の救世主
その夜、美咲は颯斗と涼太にも相談することになった。

二人とも彼女の状況を知り、それぞれアドバイスを送った。

颯斗は医者として冷静な口調で語った。

「美咲、自分自身を大切にすることも強さなんだよ。他人に頼ることも含めてね」

涼太もまた優しく微笑みながら言った。

「俺たちはお前の味方だからさ。一人で全部抱え込む必要なんてないんだよ」

二人の言葉に、美咲は少しずつ心が軽くなるのを感じた。
それでもまだ、自分自身への迷惑感や無力感から完全には抜け出せない自分がいることにも気づいていた。

「でも……私、本当に誰にも頼りたくない」

美咲は小さく呟く。

「自分で何とかしたい」

颯斗は優しく微笑み、「それは分かる」と言った。

「でも、頼ることも大切なことなんだ。自分だけではできないこともあるんだよ」


翌日、美咲は美桜とカフェで会う約束をした。

明るく元気な美桜との会話にはいつも救われる部分があった。

「美桜ちゃん、私さ……最近、本当にダメなんだ」

そう切り出した美咲に対し、美桜は驚いた表情になった。
 
「どうしたの?何かあった?」

美咲はこれまで起きた出来事や、自分自身への不安や葛藤についてすべて打ち明けた。それを聞いた美桜は真剣な表情になりながらこう言った。

「美咲ちゃん、自分だけ全部抱え込む必要なんてないよ。一人じゃなくていいんだよ」

その言葉には優しさだけではなく力強さもあった。

「私もいるし、悠真さんや颯斗さんもいる。それだけじゃなくて、自分自身をもっと信じていいと思う」

その言葉に、美咲は涙ぐみながら小さく頷いた。

「ありがとう、美桜ちゃん……」


その夜、美咲は一人部屋で考えていた。
これまで自分だけ頑張ろうとして空回りしてきたこと。そして、それでも周囲のみんなが支えてくれたこと。

「次こそ違う」

美咲は小さく呟いた。

「誰かに頼ることも、自分自身を大切にすることなんだ」

そう決意した時、美咲の胸には少しだけ光が差し込んでいるようだった。
しかし、その直後に彼女は不吉な予感を感じた。 
窓の外を見ると、遠くで煙が立ち上っている。

「また……火事?」

その瞬間、美咲の心は凍りつく。

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