火の中の救世主
瓦礫や炎によって通路がほとんど塞がれている中、再び建物内へ突入した悠真。

そして――


「美咲!」

瓦礫の隙間から彼女の姿が見えた。
倒れ込んだまま動かない彼女。
その顔色は青白く、その胸は上下していない。

「嘘だろ……」

悠真は駆け寄り、美咲の体を抱き上げる。

「おい!目を開けろ!美咲!」

しかし、美咲から反応はない。無線越しにも焦りが伝わる声で叫ぶ。

「意識不明者1名発見!今すぐ救急班準備!」

悠真は彼女を抱き上げ、出口へ向かって走り出した。


外へ運び出された美咲。

その顔色は蒼白で、呼吸も心拍も止まっていた。
周囲には救急隊員や消防隊員たちが集まり、一刻を争う状況だった。

颯斗も現場に駆けつけ、美咲の状態を確認する。

「気道熱傷による完全な心肺停止だ……」

その言葉に悠真は唇を噛み締めた。

「そんな……」

颯斗は冷静な表情を保ちながらも、その手には緊張感と焦りが滲んでいた。

「AED準備!酸素投与開始!」

救急隊員たちと連携しながら、美咲への蘇生処置が始まった。

まず胸骨圧迫――颯斗は力強く一定のリズムで美咲の胸部を押し続ける。

その間にも酸素マスクから酸素を送り込み、美咲の体内に空気を取り戻そうとする。

「頼む……戻ってこい……」

悠真はその場で膝をつきながら祈るように呟いた。
目の前で繰り返される蘇生処置。それでも、美咲の心拍は戻らない。

「もう一度AED!」

颯斗が指示を飛ばす。電極パッドを美咲の胸部に貼り付け、「ショック行きます!」という声と共に電流が流れる。

しかし――


「反応なし!」

隊員から報告される言葉に、その場の空気が一瞬凍りついた。

「まだだ……諦めるな!」

颯斗は再び胸骨圧迫を続ける。
その額には汗が滲み、その手には力強さと共に必死さが込められていた。


そして――


「脈拍確認!」

隊員から響いたその言葉。
それを聞いた瞬間、颯斗は大きく息を吐き出した。
そして美咲の胸部が小さく上下し始めたことを確認し、「よし、生きてる……」と呟いた。

しかし颯斗はすぐさま冷静さを取り戻し、「まだ予断を許さない状態だ」と告げる。

「脳や肺へのダメージも考えられる。この後も集中治療室で経過を見る必要がある」


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