火の中の救世主
その頃、

美咲の意識は遠い記憶の中へ漂っていた。

幼少期――両親と過ごした幸せな日々。
手を繋ぎながら歩いた帰り道や、一緒に笑い合った夕食の光景。

しかし、その記憶は次第に薄れ、「迎えに来てほしい」という切なる願いだけが彼女の心に残っていた。

そして、その中でふと気づく。 

「まだ生きたい……」

その思いが、美咲の中で強く芽生え始めた。

「私はまだ、大切な人たちと一緒にいたい」

その瞬間、遠くから誰かの声が聞こえた――それは悠真だった。

「戻ってこい、美咲!」


数時間後、美咲は静かに目蓋を開けた。

その瞬間、悠真は驚きと喜びで声にならない叫びを上げた。

「美咲!」

美咲はぼんやりとした視界で悠真を見る。
そして、小さな声で呟いた。

「……ありがとう」

その言葉には感謝と安堵、そして生きたいという意思が込められていた。
悠真は涙ぐみながら微笑んだ。

「お帰り、美咲」
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