火の中の救世主
数日後、集中治療室の静寂の中で、美咲はゆっくりと目を覚ました。

「……ここは……?」

視界がぼんやりとしている中、彼女は天井の白い光を見つめた。
そして、すぐ隣に座り込んでいる悠真の姿が目に入る。
彼は彼女の手を握りしめたまま眠っていた。
その顔には疲労が色濃く刻まれている。

「悠真……?」

美咲が小さく呟いたその声に、悠真はハッと目を覚ました。
彼女が目を開けていることに気づいた瞬間、彼の表情は驚きと安堵で歪んだ。

「美咲!」

悠真はすぐに椅子から立ち上がり、彼女の顔を覗き込む。

「良かった……本当に良かった……」

美咲はまだぼんやりとしているが、悠真の涙ぐんだ顔を見て微笑んだ。

「……ありがとう。助けてくれて……」

その言葉にはこれまで以上の感謝と思いが込められていた。

悠真は彼女の手を強く握りしめ、 
「お前が戻ってきてくれて、本当に良かった」と呟いた。 



それから数日間、

美咲は病院で静かに回復していった。
最初は声も弱々しく、歩くこともできなかったが、悠真や医師たちの支えによって少しずつ体力を取り戻していった。

ある日、美咲は病室の窓から外を眺めながら呟いた。

「私、生きてるんだね……」

悠真は隣で微笑みながら頷いた。

「ああ、お前は生きてる。そしてこれからもずっと生き続けるんだ」

「でも……私、また迷惑かけちゃったよね」

美咲は俯きながらそう言った。
しかし悠真は首を振り、「そんなこと思うな」と優しく言った。

「お前が生きてるだけで十分だ。それだけで俺は幸せなんだよ」

その言葉に、美咲の目には涙が浮かんだ。
そして小さな声で「ありがとう」と呟いた。
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