火の中の救世主
病院前の道端で立ち止まった彼女に声をかけてきたのは、もう一人の幼馴染――五十嵐颯斗だった。


「美咲?」


白衣姿の颯斗は驚いた表情で立ち止まり、美咲を見るなり微笑んだ。

「久しぶりだな」

「颯斗……!」


美咲も思わず声を上げる。
彼もまた幼馴染だった。

「元気そうだけど……ちゃんと食べてるか?お前、一人暮らししてるんだろ?」

颯斗は医者として働いているせいか、人を見る目が鋭い。
それでも、その言葉には優しさが滲んでいた。

「うん、大丈夫だよ。でも颯斗こそ忙しそうだね」

美咲は努めて明るく答えた。
しかし、その目線から逃げるように視線を逸らす彼女に、颯斗は小さくため息をついた。


「まあな。でも、お前みたいに無理するタイプには気をつけてほしいんだよ」

その言葉にはどこか含みがあった。
それでも、美咲は深く考えないよう努めた。

「ありがとう。でも、本当に大丈夫だから」

その週末、美咲は悠真と颯斗から誘われ、久々に3人で集まることになった。

場所は地元の小さな公園。
昔から3人で遊んでいた思い出の場所だった。

「覚えてる?小学校の時、この木から落ちそうになった時さ」悠真が指差した木を見上げながら笑う。

「俺がお前を助けたんだよな」

「え、それ違うよね。一緒に落ちたじゃん」美咲も思わず吹き出す。

「結局颯斗が二人とも運んだんじゃなかった?」

「ああ、あれね……俺、小学生なのになんでそんな重労働してたんだろうな」颯斗も苦笑する。


3人で笑い合う時間。
そのひとときだけ、美咲は自分が孤独ではないと思えた。

しかし、その裏側ではまだ心から自分自身をさらけ出すことができず、「迷惑をかけたくない」という思いが彼女を縛っていた。
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