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先生は大丈夫だとクラス委員長を手で制して、いつものように教卓に立った。

日直の女子が「起立、気をつけ、礼」と言っている間も先生はぼんやりと虚空を見つめている。

普段なら挨拶が終わるとすぐに授業を開始する先生が、この日は教科書を開くことも黒板に向かうこともせずジッとうつむいていた。

「先生？」
一番前の席の男子生徒が声をかけたとき、先生はようやく生徒へ視線を向けた。

教室内をグルリと見回し、そしてとても悲しそうな声で「昨日から永井慎二くんが家に戻っていないらしい」と言ったのだ。

突然の報告に教室内は静まり返った。

先生のいつものボソボソとした話し方だったから、自分が聞き間違えでもしたのかもしれないと思ったくらいだ。

でも、聞き間違いじゃなかった。
「昨日の放課後以降、永井くんの姿を見た人は後で先生に報告しに来てほしい」

相変わらずの話方でそう言われてもやっぱり現実感がないのか、教室内ではざわめきが鳴り止まない。
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