この小説の続きを探しています。
なれない嘘をついているから、さっきから手にジットリと汗をかいている。
スマホを持つ手も微かに震えていた。

動画は上手に取れているかどうかわからないけれど、音声は録音されているはずだ。
「さすがに家にあげてはもらえないか」

慶太がチッと舌打ちをして呟いた。
本当は細川正美の部屋に侵入して調べ物をしたかったけれど、そこまで不用心ではなさそうだ。

しばらく玄関先で待っていると、再び足音が近づいてきた。
「たぶん、これのことだと思うわ」
女性が手渡してくれたのは最近映画化された有名な恋愛小説だった。

細川正美はこれを何度も読み返すくらい好きだったんだ。
そう思うと急に切ない気持ちになった。
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