この小説の続きを探しています。
女性に紹介されて香と慶太は慌てて頭を下げた。
男性は目を細めてふたりを見つめる。
別に怪しんでいるわけではなさそうだけれど、後ろめたい気持ちから鼓動が早くなってくる。

「そうか」
男性はそう言っただけで奥へと戻っていった。
奥さんがなかなか戻ってこないから気にしただけみたいだ。

内心の安堵をさとられないように女性に視線を戻した。
「それで、なんの話だっけ?」

「短編集です。恋愛小説ではなくて、どちらかといえばホラー寄りの作品も貸してくれるって言っていたので」

香が早口で説明すると、女性は右の頬に手を当てて首をかしげた。
「ホラー小説? あの子は怖い話はそんなに得意じゃないから、持っていないはずだけど」

「じゃあ、それに似たなにかを聞いたことはないですか? 例えば、小説に出てくる主人公が自分の名前に似ているとか」
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