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☆☆☆

ふたりで肩をならべて歩きながら、香は再びスマホカメラを構えた。
太陽は真上に昇ってきているけれど、気温はなかなか上がらない。

吐き出した息はとても白くて春の遠さを物語っていた。
あと一月もすれば桜が咲き始めるだなんて、嘘みたいだ。

「今私達は細川正美さんの家に言って、本について質問しました。でも、なにも知らないみたいでした。そこから移動して来たのは、ここです」

カメラレンズが広い交差点を移した。

交差点の手前には《目撃情報求む!》と緊急性のある看板が出ていて、細川正美さんがいなくなった日付、連作先の警察署の電話番号が記載されている。

「こんな大通りなら、目撃証言があっていいよな」
慶太が行き交う車や歩き去っていく人々を見て呟く。

交差点で信号待ちをしている人も少なくないし、周囲を見回せばあちこちに防犯カメラが設置されていることに気がついた。

こんな中で人ひとりがいなくなるなんて、神隠しにでも合わないと無理な話だ。
「慶太、本を見せて」
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