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しどろもどろに答えると、男性の表情が不意に陰った。
それはさきほど見た細川夫婦のそれによく似ていて香はドキリとする。

「あ、あの、なにかあったんですか？」
「いや、ジロジロ見てごめん。僕にも君達くらいの娘がいて、ついね」

苦笑いを浮かべる男性に、香は慶太へ視線を向けた。
慶太はハッとした表情で男性を見つめていた。

「もしかして、堀田さんですか？」
そう質問したのはどう考えても時期尚早だった。

相手が誰なのかもわからない、ただ堀田千穂と同じマンションの住人というだけで決めつけてしまっている。

全くの他人の可能性のほうがよほど強い。
けれど相手は大きく目を見開いて絶句してしまった。

「そうか、ニュースにもなったし、知っているよな」
驚いた表情のあと、弛緩するように微笑んだ。

その笑顔はさっきまでの都立食われたものとは少し違って、素の表情を垣間見た気がした。

「俺たち千穂さんの友人なんです。花火大会のときに友だちになって、ニュースを見てびっくりして……」

「なんだそうだったのか。それなら早く言ってくれればいいのに」

男性、堀田さんはそう言いながら香と慶太をマンション内へと招いたのだった。
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