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なにげなく周囲を見回したとのときだった。
ふいに背筋がゾクリと寒くなって正美の顔から血の気が引いていった。

今まで同じように信号待ちをしていたと思っていた人たちが、今はこつ然といなくなっていたのだ。

横断歩道の手前で信号待ちをしているのは自分ひとりだけ。
それに気がついた瞬間、リナの言葉が蘇ってきた。

『それ以来あの交差点の信号でひとり待ってると女の子の声が聞こえてくるようになったんだって『助けて……ここにいるよ……私を見つけて!!』ってね』

どうしよう。
なにか聞こえてきたらどうしよう。

知らない間に体がガタガタと震えて、全身が冷たくなっていた。

あんな話信じていないはずなのに、今にも女の子の声が聞こえてきそうで両耳を塞いだ。

ついできつく目を閉じて信号が変わるのを今か今かと待つ。
と、そのときだった。
正美の前に黒い車が停車した。

信号はまだ変わらないのに、その車は歩道にぴったりと横付けされ、後部座席から真っ黒な服を来た人物が下りてきたのだ。
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