この小説の続きを探しています。
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通された事務所は四畳ほどの狭い空間で、真ん中に背の高いテーブル、部屋のスミに積まれた丸椅子、そして小さな棚に電気ポットが置かれているだけだった。

西羽咲に繋がりそうなものは、ここにはなにも置かれていない。
展示物は入れ替わることなく、ずっと同じものが置かれているみたいだ。

「これに座って、少し待ってて」
男性が丸イスをふたつ用意してくれて、電気ポットにペットボトルの水をそそぎはじめた。

白いマグカップを3つ用意して、その中にティーパッグを入れる。
しばらく待っていると、すぐにお湯が湧いた。
「ありがとうございます」

マグカップを両手で包み込むと指先の冷えが徐々に和らいでくる。

外の寒さは香たちの地元では感じることのない類のものだったから、今更ながら震えが走った。

「それで、西羽咲先生はどうしていなくなったんですか?」
慶太は話が聞きたくてうずうずしているようで、ろくにお茶に視線も向けずにそう質問をしていた。
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