この小説の続きを探しています。
「なにが起こったのか、正直僕にもわからないんだ。ただ、花月は半年前に自宅からこつ然と消えたんだ」

「自宅から?」

「そう。僕は一階のリビングにいて、花月は朝から書斎で仕事をしてた。だけど昼を過ぎても下りてこないから様子を見に行ったら……もう、どこにもいなかったんだ」

慶太の質問に男性は力なく返事をして、お茶を一口飲んだ。
よほど熱かったのか一瞬顔をしかめて、そしてため息を吐き出した。

「外出はしてないんですか?」
香の質問に男性はうなづく。
「してないよ。一階へ下りてくればその足音で僕も気がついたはずだからね」

夫婦が暮らしている家は築年数が古くて、2階の物音はしっかりと一階に聞こえてきていたらしい。

歩く音、窓を開ける音。
その日はとても静かだったと言う。

「花月は集中して仕事をしてるんだと思ってた。だからこんなに静かなんだなって」

そこまで言って男性は左右に首をふる。
「でも違ったんだ。僕が知らない間にいなくなってた」
「いなくなったときの部屋の様子はどうだったんですか?」
< 83 / 133 >

この作品をシェア

pagetop