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香が慶太に顔を向ける。
慶太は恐怖に体を震わせ、そして頷いてみせた。
「冗談だろ? そんなことがあるわけない」

「でも、西羽咲先生は消えた。これも非現実的なことじゃないですか?」
慶太に言われて男性は大きく目を見開いて黙り込んだ。

しばらく逡巡するように狭い部屋の中を見回した後、自分を落ち着かせるようにお茶を一口飲んだ。

「そうだな。君の言う通り不可解なことが起きてる。この記念館は花月の情報を少しでも集めたくて作ったんだ。花月に親しかった人、花月に興味を持っていた人、色々な人に足を運んでもらって、話を聞くためにね」

その話にどうしてこんな小さな記念館が作られたのか、ようやく理解できた。
この記念館はきっと、西羽咲が戻ってくるまで閉館することはないんだろう。

「この本を読ませてもらってもいいかい?」
「もちろんです。そのために持ってきました」

慶太は力強い眼差しで頷いたのだった。
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