愛を知って涙に幸あれ。

週明け、わたしは出勤してすぐに社長の元へ行き、退職したい旨を伝えた。

すると社長は「いつ退職したいんだ?」と、理由も訊かずに煙草をふかしながら言った。

「本日付でも、よろしいでしょうか?」

わたしがそう言うと、社長はデスクの引き出しを開け、一枚の退職届を出すと「これ、書いて出して。」と言った。

こうして、わたしはあっさりと退職することが出来た。

わたしは社員たちの前で「突然で申し訳ありませんが、本日付で退職することになりました。お世話になりました。」と頭を下げたが、誰も何も言わず、白浜さんに関してはわたしと目も合わそうとしなかった。

こんな会社辞められて良かった。

わたし、よくこんなとこで3年も働いてたなぁ。

わたしはそう思いながら、自分が使っていたデスク回りの片付けをして、3年ちょっと働いてきたこの会社を去った。


その日の夜、お風呂もあがり落ち着いた時、わたしは幹ちゃんとソファーに並んで座り、今日も幹ちゃんに寄りかかっていた。

「無事退職出来て良かったな。」
「うん。」
「うちの社長は、いつから来てもいいって言ってくれてるから、せっかくだし今週は一週間休んで、来週から出勤したらどうだ?」
「ううん、休みなんていらない。明日から幹ちゃんと出勤する。一人で家に居たって、寂しくなるだけだから。」

わたしがそう言うと、幹ちゃんは「分かった。じゃあ、明日から一緒に出勤しよ。」と言って、わたしの頭の上にポンッと手を置いた。

「あ、わたしの好きな手。」
「好きなのは、手だけ?」

意地悪な訊き方をする幹ちゃんにわたしは照れてしまったが、「幹ちゃんが、、、好きです。」と答えた。

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