愛を知って涙に幸あれ。
その女性はコツコツとヒールを鳴らしながら、わたしの目の前まで来ると、名刺を差し出し「FCC、代表取締役社長の紺野星佳です。今日からよろしくね。」と言った。
わたしは名刺を受け取ると、「新星優弦の妹の、新星優莉です。どうぞ、宜しくお願い致します。」と言い、深く頭を下げた。
「やだぁ、そんな緊張しなくていいのよ?うちは、そんな堅苦しい会社じゃないから。頭上げて?」
紺野社長がそう言ってくださり、わたしはゆっくりと頭を上げた。
「本当、さすが兄妹。優莉ちゃん可愛いわね。優弦が毎日のように妹自慢をしていた理由がわかるわ。」
紺野社長はそう言うと笑い、そして「優莉ちゃん。わたしは、とってもあなたのお兄さんに助けられてきてるの。だから、優弦の妹さんをわたしの秘書にって幹太から話があった時、嬉しくて即オッケーしたの。わたしも、ここの社員全員も、優弦があなたを大切に想っている事はよく分かってる。だから、あなたの悲しみもどれだけ深いものか理解してるつもりよ。」と言った。
それから紺野社長はわたしの手を取ると、「焦らなくていいから、ゆっくりうちの会社に馴染んでいってくれたら嬉しいわ。無理して頑張ろうとしなくてもいい。大切なお兄さんを亡くしたあとだもの、仕事が捗るわけないし、ぼんやりしてしまうこともあると思う。でも、ここにはそれであなたを責める人はいないから。だから、マイペースにやっていきましょう?ねっ?」と言い、わたしに微笑みかけてくれた。
わたしは何て恵まれているんだろう。
こんな素敵な環境で、わたしはこれから働かせてもらえるんだ。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。」
わたしはそう言いながら、涙を流してしまった。
すると、幹ちゃんが「あ、社長。優莉のこと泣かした。」と言い、紺野社長は「やだぁ〜!大事な妹さんを泣かせたら、優弦に怒られちゃうじゃない!」と焦っていた。
ここは何て温かい会社なんだろう。
お兄ちゃんと幹ちゃんのおかげだね。
ありがとう。