魔術罠師と猛犬娘/~と犬魔法ete
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 魔族たちにとって人間の領域への旅はしばしば保養や遊興でもある。地域や国によっては政治家はおろか裁判官などまでも買収されていたり親魔族派のギャングだったりするから、夜中に女や子供を襲って猟奇事件を起こしても逃げ切れる。警察や裁判所が手をこまねいているうちに、魔族支配下の領域に逃げ帰れば、そのままウヤムヤにできる。魔族領域では狩猟権や密猟などと、魔族同士での争いが面倒だったりもするから、「自由な狩り場」で羽を伸ばすのは安らぎのひとときだった。
 お忍びで外商にきた魔族の騎士たちが、今夜も夜の街へと「狩り」に繰り出していく。夜間ならうっとおしい日光での疲労もなく、夜目には普通の人間と区別しづらいし、貴族や金持ちのような良い身なりをしていれば愚かな獲物は向こうから寄ってくる。

「一昨日の女は良かったなあ。あんな売女でも若いし、あっちの具合も肉の味も」

「乳と肝臓、やっぱり若いと刺身で食べる味が違うよ。まだ生きていて、すごくいい表情してる前で「美味しい」って言ってやるのが楽しい」

「でも生きたままだと、漏らしちゃうだろ。食ってる最中に糞や小便とかぶちまけられたいか。ぶちまけるのは俺らのザーメンだけでいいっての」

 魔族の騎士たちは声を上げて笑った。

「なぶり殺しながら切り刻んで食べてくのが通ってもんだろ?」

「人によってはそれが興をそそるっていうけども、俺はちゃんと殺してから血抜きした活け作りやしゃぶしゃぶが好き。
こういう旅行だと、しっかり火を通したりはやりづらいから。若くない肉も煮込みにすると、あれはあれで美味いのに。昨日の女だって「しゃぶしゃぶできたらなー」ってのはちょい残念だった」

「注文の多い奴だな。こういう旅行では「ワイルドな狩りのグルメ」を楽しまないと。硬い肉の煮込み料理なんて、帰ったらいくらでも食えるさ」

「昨日は女だったから、今日は男でもやるか。筋肉量が多そうな奴でレアステーキに」

「ううむ。だけど男だと、女みたいに「可愛がる」のができないからなあ」

「「死にたくない」だ「許して」だピーピー命乞いしながら、アソコがいい具合に絞まって最高だ。一匹で二回も楽しく美味しい。やっぱり今夜も女にしようぜ」

「賛成! 金を見せたら簡単に釣れるしな」

「はは、みんなスケベだなあ」

 この一回の旅行で、最大で五六人くらいまでが限度だろうか。彼らがいかに「魔族の騎士」で立場が有利であるとはいえども、十人も二十人も短期間で行方不明や猟奇殺人が続発すれば揉み消しや隠しきれなくなってくるし、軍の戦士団が動くと厄介だった。
 やがて、良さげな若い女を見つけた。
 年齢が若すぎるし、どことなくオドオドして怯えているようで、あまり夜のいかがわしい商売の年季が入ってなさそう。

「あの子でよくないか?」

 騎士の一人が近づいて、金貨を五枚ほどちらつかせた。

「やあお嬢さん。俺ら、余所の町から商売の取引に来ているんだけどね、遊ぶ相手を探してるんだ」

 娘は顔を見てびくっとしたが、手のひらの金貨に目を落とし「本物なの?」と声を潜めた。

「一緒にこないかい?」

「三人もいるんだったら、他の子も呼んだほうがよくない?」

「君一人で三人相手してくれたらいい」

「ちゃんとそれ全部くれる? ごまかして逃げられることもあるから、こっちで場所決めさせてくれない? 他の子も選んでくれたら、二人か三人でその金貨でわけるから」

「いや、君一人でいいんだ」

「怖いよ。どうしてもって言うなら、そこの裏路地でどうかな。さっさとすませてくれたら、その金貨一枚か、二枚でもいいよ」

 本能と警戒心も、意地汚い欲には勝てない。それでも身を守ることを少しでも考えているようすなのは、臆病なのか賢明なのか。
 魔族の騎士は娘に金貨を一枚握らせた。二人で路地裏に入っていく。ここで騒がれると面倒だったし、見計らって気絶させて攫って、安全な場所に持っていって弄び切り刻んでもいい。
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