魔術罠師と猛犬娘/~と犬魔法ete
5
そこからは一方的なまでの虐殺と殲滅だった。
トラバサミ仮面は銀色の炎のようなフランベルク剣(刃がギザギザのノコギリみたいな)を振りかざし、通常の人間なら有り得ない身体能力で、残りの盗賊たちを蹂躙していく。次々と撫で斬りに切り倒し、遠間では紫電を伴う投げナイフ。
魔術者は身体能力の向上・強化ができたり、物体を加速するような技もあるそうだから、たぶんそれだろう。何かしら剣技や格闘術を身につけていて、見た目の装いこそは粗野で蛮勇な戦士風であるけれど、本質は魔術者なのだ。ゴブリンどころかオーク(いわゆる大鬼)ですら勝負にならないところからして、人間の使い手としては初級や下層でなく中級者以上。
(でも、人間の魔術者がこんなことを?)
聞いていた話では、人間たちの魔術者協会は腐りきっていて、腐った政治屋や一部の商人などと共に「親魔族勢力」の一角であるらしい。特に人間たちの間では魔術の才能と能力は特殊な資質や特権であるために、自らを魔族と同様に先天的な支配階級とする選民思想が広まっているとか。魔術には後天的に習得できるものもあるし、特定の利権集団のイデオロギーやプロパガンダではあっても、「元締め」の協会がそんな具合では魔術者全般の態度や考え方に影響する。
そのために、ここの山賊ギャングのような手合いも野放しになりがちだし、本来は戦士団・軍と魔術者が連携して防衛していた仕組みが上手く機能しなくなって、それで魔族支配下の領域が広がってきている。この辺りだって元は人間寄りの中立地帯だったはずがだんだん魔族・魔王軍の影響力が強くなり、昔には人間の村や町とも隣人として通商や付き合いしていたのが親魔族ギャングが幅を効かせてきて、欺されて奴隷に売られたりで信用できなくなってエルフやドワーフたちも困窮してしまっているのが実情。ルパ自身の村も魔王軍傘下の山賊とゴブリンに滅ぼされて、森林に逃げ延びて難民キャンプの有様でどうにか隠れ住んでいる。
たぶん人間の魔術者たちにも、現状や魔術者協会の方針を良しとしない者がいるのだろう。そういう噂もたまに耳にする。勝手に魔族ギャングと争ったり軍の戦士団と協力したりして、魔術者協会からは快く思われていないらしい。このトラバサミ仮面がわざと物理攻撃ばかりで倒しているのも、あとで山賊の死体が「物理的な暴力でやられた」ように印象付けたいのか(偽装や隠蔽のためにこういうやり方をしている?)。
6
混乱の中で、パニックを起こした山賊の一人が誘拐していた娘を殺そうとした。
「お前らの村が助けを呼びやがったのか? こんな真似しても逃げられるとか思うなよ! こ、殺してやる!」
つくづく「弱者相手のときは勇敢」な奴ら。昨晩にも虐待したであろう憔悴した娘に、斧を持って立ち向かう。
あーしは背後から忍び寄って、その足に噛みついてやった。敵が武器を持っているから危険はあったが、少しでも気を引けば、逃げる時間とチャンスくらい作ってやれる。顎に力を込めて、左右に振り回す。山賊男は激痛でとっさに身動きが止まり、とっさに斧を手から落とす(根性なし?)。
(さっさと逃げ!)
あーしが目配せしたら、娘は虚脱しながら目が据わっていて、思いもよらぬ行動に出た。手近にあった子供の頭くらいある石を両手で持ち上げ、投げつけたのだ。女の細腕ながら、全力ならそれくらいやってできなくはない。石が盗賊男の頭に当たって、「がっ」と悲鳴をあげて尻もちをつく。
額から血を流して「このアマ」と睨んだ怒りの眼差しは、すぐに恐怖の表情に早変わりした。なぜなら反撃に出た娘が、さっき地元に転がった斧を拾い上げていたから。
何か威嚇するように叫びかけた顔面に、思い切り振り下ろされる斧。腕でガードしても、肉を切り裂いて血が噴き出す。そのまま娘は三四回くらい両手で連続で斬りつけ振り下ろす。壊れた両腕が下がった頭に、ガンッと薪割り風の一撃。斧をモヒカンのように頭に飾って、山賊男はバッタリと倒れる。
さっきの話の断片から察するに、たぶん娘は自分自身が誘拐や暴行されただけでなく、住んでいた村も襲撃されて犠牲者や被害が出ている。だったらなおさら怒っていて当たり前だろう(どんなおとなしい人間でも、一定限度を超えたらキレるものだし、命がかかっていたらなおさら!)。
そこであーしはニヤッと微笑みかけ、尻尾を振って「ナイスファイト」を讃えてやった。
そこからは一方的なまでの虐殺と殲滅だった。
トラバサミ仮面は銀色の炎のようなフランベルク剣(刃がギザギザのノコギリみたいな)を振りかざし、通常の人間なら有り得ない身体能力で、残りの盗賊たちを蹂躙していく。次々と撫で斬りに切り倒し、遠間では紫電を伴う投げナイフ。
魔術者は身体能力の向上・強化ができたり、物体を加速するような技もあるそうだから、たぶんそれだろう。何かしら剣技や格闘術を身につけていて、見た目の装いこそは粗野で蛮勇な戦士風であるけれど、本質は魔術者なのだ。ゴブリンどころかオーク(いわゆる大鬼)ですら勝負にならないところからして、人間の使い手としては初級や下層でなく中級者以上。
(でも、人間の魔術者がこんなことを?)
聞いていた話では、人間たちの魔術者協会は腐りきっていて、腐った政治屋や一部の商人などと共に「親魔族勢力」の一角であるらしい。特に人間たちの間では魔術の才能と能力は特殊な資質や特権であるために、自らを魔族と同様に先天的な支配階級とする選民思想が広まっているとか。魔術には後天的に習得できるものもあるし、特定の利権集団のイデオロギーやプロパガンダではあっても、「元締め」の協会がそんな具合では魔術者全般の態度や考え方に影響する。
そのために、ここの山賊ギャングのような手合いも野放しになりがちだし、本来は戦士団・軍と魔術者が連携して防衛していた仕組みが上手く機能しなくなって、それで魔族支配下の領域が広がってきている。この辺りだって元は人間寄りの中立地帯だったはずがだんだん魔族・魔王軍の影響力が強くなり、昔には人間の村や町とも隣人として通商や付き合いしていたのが親魔族ギャングが幅を効かせてきて、欺されて奴隷に売られたりで信用できなくなってエルフやドワーフたちも困窮してしまっているのが実情。ルパ自身の村も魔王軍傘下の山賊とゴブリンに滅ぼされて、森林に逃げ延びて難民キャンプの有様でどうにか隠れ住んでいる。
たぶん人間の魔術者たちにも、現状や魔術者協会の方針を良しとしない者がいるのだろう。そういう噂もたまに耳にする。勝手に魔族ギャングと争ったり軍の戦士団と協力したりして、魔術者協会からは快く思われていないらしい。このトラバサミ仮面がわざと物理攻撃ばかりで倒しているのも、あとで山賊の死体が「物理的な暴力でやられた」ように印象付けたいのか(偽装や隠蔽のためにこういうやり方をしている?)。
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混乱の中で、パニックを起こした山賊の一人が誘拐していた娘を殺そうとした。
「お前らの村が助けを呼びやがったのか? こんな真似しても逃げられるとか思うなよ! こ、殺してやる!」
つくづく「弱者相手のときは勇敢」な奴ら。昨晩にも虐待したであろう憔悴した娘に、斧を持って立ち向かう。
あーしは背後から忍び寄って、その足に噛みついてやった。敵が武器を持っているから危険はあったが、少しでも気を引けば、逃げる時間とチャンスくらい作ってやれる。顎に力を込めて、左右に振り回す。山賊男は激痛でとっさに身動きが止まり、とっさに斧を手から落とす(根性なし?)。
(さっさと逃げ!)
あーしが目配せしたら、娘は虚脱しながら目が据わっていて、思いもよらぬ行動に出た。手近にあった子供の頭くらいある石を両手で持ち上げ、投げつけたのだ。女の細腕ながら、全力ならそれくらいやってできなくはない。石が盗賊男の頭に当たって、「がっ」と悲鳴をあげて尻もちをつく。
額から血を流して「このアマ」と睨んだ怒りの眼差しは、すぐに恐怖の表情に早変わりした。なぜなら反撃に出た娘が、さっき地元に転がった斧を拾い上げていたから。
何か威嚇するように叫びかけた顔面に、思い切り振り下ろされる斧。腕でガードしても、肉を切り裂いて血が噴き出す。そのまま娘は三四回くらい両手で連続で斬りつけ振り下ろす。壊れた両腕が下がった頭に、ガンッと薪割り風の一撃。斧をモヒカンのように頭に飾って、山賊男はバッタリと倒れる。
さっきの話の断片から察するに、たぶん娘は自分自身が誘拐や暴行されただけでなく、住んでいた村も襲撃されて犠牲者や被害が出ている。だったらなおさら怒っていて当たり前だろう(どんなおとなしい人間でも、一定限度を超えたらキレるものだし、命がかかっていたらなおさら!)。
そこであーしはニヤッと微笑みかけ、尻尾を振って「ナイスファイト」を讃えてやった。