魔術罠師と猛犬娘/~と犬魔法ete
4
「ポンポコタン、オー! ポンポコタン!」
目を覚ますと、ヘソ天仰向けだったあーしの腹を、トラが左右の手の指先で小太鼓よろしくポンポンと叩いておりました。痛くないよう軽く優しく、だがリズミカル。頭を前後上下に揺らせて、「ポンポコタン」なぞと小声に呟きやがって。
わかってます? 犬のおっぱいはお腹なので、そんなことされたら指で乳首を当たって突っつかれてるんですけど? 犬一般は服従ポーズで腹を撫でられると喜ぶにしたって、あーしの正体は獣エルフのうら若き乙女なんですけどね!
薄目を開けて顔をうかがう私に言うこと。
「起きた? お前ってタヌキに勝てそう? 小さいけどいい音してないか? 似た動物仲間だし」
灰色髪の普通に穏やかそうな表情。
あーしはあくびしつつ前脚を伸ばして犬パンチ。
そしたら、今度は顔からきやがって。おっぱいのない毛むくじゃらの胸元に顔を埋めて「犬臭い奴め」と抜かしよる。もう犬笑いするしかなかった。
5
やがて日が沈みかけ、また夜闇が迫る。
日没からしばらくは様子見していて、夜半に自分たちも移動して、先に行った人たちの後を追うつもりであるらしい。こんな犬の姿にも、話して聞かせてくれる。
そこであたしには、やることができた。
山賊キャンプ跡で略奪。
幸いにも、トラも追加の食料だのいくばくかの物品漁りを考えたらしく、一緒に行ってくれる好都合さ。連れだって歩き出す足取りは軽かった。
6
油断大敵、あーしと彼の「二度目の出会い」。
考えつく限りでも最悪だった。
ちょいとトイレにでも行く振りをして離れ(出発時には声をかけてくれるだろうし、いざとなったら狼変身したりトラに助けを求めてもいい)、こっそり変身解除して「略奪漁り」をしていたのさ。最初は「まず着るもの」を思っていたのが、金貨の袋を見つけたのが運の尽きだった。もう一つくらい近くに金目のものがないかと夢中になりだし、裸なのも気にせずにテントの中を漁り探していた。
そうしたら、トラがやってきて。
「おーい、いぬー! どうした?」
直視して声をかけたのは、あーしの素っ裸でかがみ込んで突き上げた尻だった。トラも近くにきたところで様子が変には感じていたらしいが、まさかそんな光景に出くわすとは思っていなかっただろうよ。たとえ物取りにきた村娘や冒険者がうろついていたとしても、全裸でやっているとは夢にも思うまい。
「君は?」
トラバサミの鉄仮面で硬直している。
あたしは振り返って、引き攣った笑顔になる。
「犬?」
なんとなく、トラは察したらしかった。あとで聞いたところでは、口を開いて笑った表情にどこか面影と印象の類似があったらしく、耳が獣耳であることから獣エルフだと気づいたらしい。
だが、あんな暗がりで耳が犬耳だとわかったということは(魔術で視力向上していた)、直前にガン見した、私の突き上げ曝したヒップもバッチリ見えていたのだろう。思い出すだけで恥ずかしさと情けなさで頬が火照ってくるが、どうせだったら人間姿での発対面はもっと格好良くロマンチックなのが良かった。
それでも引き攣った顔でどうにか平静をつくろって、できるだけ慎ましく胸元だけでも腕で隠して愛想笑いで言った。
「獣エルフの犬鳴(いなき)ルパです。昨日は助けて頂いてありがとうごさいます。ご一緒しますし、あたしの弟や仲間にも紹介したいのですが」
それだけでこちらのことはわかっただろう。
そのまま押し倒されるのを覚悟したが、トラは理性で堪えた。獣の姿よりも探知の感覚はなまっているものの、彼が瀬戸際の精神状態だったのはわかる。
目で探して巻きつけて着られそうな布を見つけていたのだが、あたしはわざとすぐには取りに動かず見つめ合っていた。あんまり慌てると拒否したりしていると受けとられそうなのが嫌だったし、処女ながらに少し期待してもいた。
「これ」
トラもそれを見つけたらしく、そっと手渡してくれた。ひとまずは見逃してくれたらしい。
でもその夜中に出発するときに臭いでなんとなく察した。やっぱり目にした不意打ちの絶景に興奮しすぎて耐えられなくなったのだろうか、あたしは己が女としての魅力に自信を強めた。
「トラさん」
「?」
「あーしの裸見て、びっくりして興奮した?」
「あ、うん」
「我慢しなくても、襲っていいよ。処女だけど」
「あ、うん。いいの?」
「あたしじゃ嫌?」
「そんなことはけっして」
出立して盗賊キャンプを離れ、しばらく行って安全そうになってから。あの村人たちに合流する前にキスして。
「ポンポコタン、オー! ポンポコタン!」
目を覚ますと、ヘソ天仰向けだったあーしの腹を、トラが左右の手の指先で小太鼓よろしくポンポンと叩いておりました。痛くないよう軽く優しく、だがリズミカル。頭を前後上下に揺らせて、「ポンポコタン」なぞと小声に呟きやがって。
わかってます? 犬のおっぱいはお腹なので、そんなことされたら指で乳首を当たって突っつかれてるんですけど? 犬一般は服従ポーズで腹を撫でられると喜ぶにしたって、あーしの正体は獣エルフのうら若き乙女なんですけどね!
薄目を開けて顔をうかがう私に言うこと。
「起きた? お前ってタヌキに勝てそう? 小さいけどいい音してないか? 似た動物仲間だし」
灰色髪の普通に穏やかそうな表情。
あーしはあくびしつつ前脚を伸ばして犬パンチ。
そしたら、今度は顔からきやがって。おっぱいのない毛むくじゃらの胸元に顔を埋めて「犬臭い奴め」と抜かしよる。もう犬笑いするしかなかった。
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やがて日が沈みかけ、また夜闇が迫る。
日没からしばらくは様子見していて、夜半に自分たちも移動して、先に行った人たちの後を追うつもりであるらしい。こんな犬の姿にも、話して聞かせてくれる。
そこであたしには、やることができた。
山賊キャンプ跡で略奪。
幸いにも、トラも追加の食料だのいくばくかの物品漁りを考えたらしく、一緒に行ってくれる好都合さ。連れだって歩き出す足取りは軽かった。
6
油断大敵、あーしと彼の「二度目の出会い」。
考えつく限りでも最悪だった。
ちょいとトイレにでも行く振りをして離れ(出発時には声をかけてくれるだろうし、いざとなったら狼変身したりトラに助けを求めてもいい)、こっそり変身解除して「略奪漁り」をしていたのさ。最初は「まず着るもの」を思っていたのが、金貨の袋を見つけたのが運の尽きだった。もう一つくらい近くに金目のものがないかと夢中になりだし、裸なのも気にせずにテントの中を漁り探していた。
そうしたら、トラがやってきて。
「おーい、いぬー! どうした?」
直視して声をかけたのは、あーしの素っ裸でかがみ込んで突き上げた尻だった。トラも近くにきたところで様子が変には感じていたらしいが、まさかそんな光景に出くわすとは思っていなかっただろうよ。たとえ物取りにきた村娘や冒険者がうろついていたとしても、全裸でやっているとは夢にも思うまい。
「君は?」
トラバサミの鉄仮面で硬直している。
あたしは振り返って、引き攣った笑顔になる。
「犬?」
なんとなく、トラは察したらしかった。あとで聞いたところでは、口を開いて笑った表情にどこか面影と印象の類似があったらしく、耳が獣耳であることから獣エルフだと気づいたらしい。
だが、あんな暗がりで耳が犬耳だとわかったということは(魔術で視力向上していた)、直前にガン見した、私の突き上げ曝したヒップもバッチリ見えていたのだろう。思い出すだけで恥ずかしさと情けなさで頬が火照ってくるが、どうせだったら人間姿での発対面はもっと格好良くロマンチックなのが良かった。
それでも引き攣った顔でどうにか平静をつくろって、できるだけ慎ましく胸元だけでも腕で隠して愛想笑いで言った。
「獣エルフの犬鳴(いなき)ルパです。昨日は助けて頂いてありがとうごさいます。ご一緒しますし、あたしの弟や仲間にも紹介したいのですが」
それだけでこちらのことはわかっただろう。
そのまま押し倒されるのを覚悟したが、トラは理性で堪えた。獣の姿よりも探知の感覚はなまっているものの、彼が瀬戸際の精神状態だったのはわかる。
目で探して巻きつけて着られそうな布を見つけていたのだが、あたしはわざとすぐには取りに動かず見つめ合っていた。あんまり慌てると拒否したりしていると受けとられそうなのが嫌だったし、処女ながらに少し期待してもいた。
「これ」
トラもそれを見つけたらしく、そっと手渡してくれた。ひとまずは見逃してくれたらしい。
でもその夜中に出発するときに臭いでなんとなく察した。やっぱり目にした不意打ちの絶景に興奮しすぎて耐えられなくなったのだろうか、あたしは己が女としての魅力に自信を強めた。
「トラさん」
「?」
「あーしの裸見て、びっくりして興奮した?」
「あ、うん」
「我慢しなくても、襲っていいよ。処女だけど」
「あ、うん。いいの?」
「あたしじゃ嫌?」
「そんなことはけっして」
出立して盗賊キャンプを離れ、しばらく行って安全そうになってから。あの村人たちに合流する前にキスして。