悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます!
「なーんて。シンプルに面白そうだと思ったから出向いただけなんですけどねー」
「……は?」
「いやー、思っていた以上にあの男爵令嬢は性悪でしたね。お嬢様以上に口が悪いし、見た目も性格もマリアンヌお嬢様の方が何倍も可愛らしい」
「……うん、もういいわ」

ぐったりとしたマリアンヌがソファーに行儀悪く体を倒すと、少しも悪びれないアレンは紅茶を勧めながら普通に話しかけてきた。

「そういえばお嬢様、私事で恐縮なのですが、実家の都合で明日から三日ほどお休みをいただきます。お嬢様のせっかくの連休にお世話ができないのは心苦しいですが」
「そういえばそうだったわね。聞いているわ。私のことなら気にせずとも平気よ。お茶会なら規模が小さいものだし、集まるのは常識的な令嬢ばかりだから。あなたはゆっくりしてきてちょうだい」

体勢を戻したマリアンヌがアレンを見つめて言うと、執事見習いは静かに頭を下げた。
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