悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます！
アレンはマリアンヌが八歳の時からこの家に仕えている。
しかし、彼のはっきりとした年齢、実家、家族など、プライベートな部分については謎に包まれていた。
この国の出身なのかすら、マリアンヌは知らないのだ。

昔、兄弟の話になったことがある。
あれは確か、マリアンヌの年の離れた兄が次期公爵としての勉強の為、しばらく領地で生活することになってしまった時のことだった。

「アレン、お兄様が領地に行ってしまうのですって。お兄様が居ないと寂しいわ」
「お嬢様も間もなく王子妃教育が始まるそうですから、すぐに忙しくなりますよ」
「アレンには兄弟はいないの？　執事見習いをしているとなかなか会えなくて寂しいわよね」
「別に……」

素っ気なく答えたアレンの横顔に、その時は勝手に照れ隠しだと納得していたのだが。
その後もマリアンヌが家族や実家について尋ねるたびに、アレンが言葉を濁して喋りたく無さそうにしているのに気付いてからは、訊くのをやめた。
最近は実家を理由に休みを取ることが増えてきたので、何かしらの変化があったのかもしれないと思ってはいるが、アレンから話してくれるまでは聞き出すつもりはなかった。
謎の多い執事見習いではあるが、マリアンヌにとってアレンはかけがえのない存在なのである。

考えてみれば、アレンって顔まで前髪で隠れているのよね。
ふふっ、どれだけ秘密主義者なのよ。

機嫌を直したマリアンヌは、生徒会室でのロザリーの様子を再現して見せたりして、楽しいお茶の時間を過ごしたのだった。

< 43 / 54 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop