姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 私が入室を促すと、やっとジンガルドは室内に足を踏み入れた。ただし、扉は薄く隙間を残したまま。物凄く紳士である。
「突然やって来てすまない。午前中の政務で外出した際、たまたま珍しいチョコレートが手に入ったんだ。連日であれかとは思ったんだが、早く渡したくて待ちきれずに来てしまった」
 ジンガルドは少し照れたようにそう言って、懐から手のひらサイズの缶を差し出した。
「わぁ、可愛い! 開けてもいい?」
「もちろん」
 星形の缶は綺麗な金色だ。ジンガルドの瞳を思わせるその色にドキリとしながら缶を開けると。
「……宝石みたい。なんだか食べるのがもったいないわ」
 艶やかな光沢を放つボンボンショコラが全部で六粒。その美しさに目を奪われてホウッとこぼすと、ジンガルドが悪戯っぽく笑って言う。
「それはよろしくないぞ。俺がまたチョコレートを持ってくる口実がなくなってしまう。だから、もったいないなどと言わずに食ってくれ」
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