姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 きっとオズモルトなりに、俺の婚姻に頭を悩ませていたのだ。それに思い至れば、イラつきも萎む。
「よかったですねぇ、ジンガルド様。わざわざ並んだ甲斐がありましたね~」
「……なんのことだ?」
「いやですね~、チョコレートですよ。あの人気店の行列に代理も立てずに自ら並んで、限定商品を手にしてほくそ笑んでたじゃないですか」
 オズモルトは国中至るところに配下を潜ませており、この男が俺の動向を知っていること自体はさして問題ではないのだが。それにしたって言い方というものがあるだろうに、この男にはそういう配慮というものが抜け落ちている。
 前言は撤回で、やはりこの男は俺を苛立たせる天才だ。
「……騎士団での鍛錬を増やすか?」
「わっ。なにげに職権乱用ですからね、それ!? 分かってますか?」
 わざとらしい声をあげたオズモルトだったが、一拍の間を置いてしみじみと口にした。
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