姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?

　大口開けて食べるのを見られていた恥ずかしさ。さらにジンガルドが醸し出す甘い空気もむず痒くて、次のひと口を食べようとしていた手が止まる。すると、なにを思ったか、彼がサンドイッチを持つのと逆の手を伸ばしてくる。
　……え？
　彼の指先が私の唇に沈み、そのままツーッとなぞる。
　いったい、なにが起こってるの？　すぐに状況が理解できず、目を見開いたまま固まった。
「口の端にソースが付いていた」
　指を離したジンガルドはあろうことかその指先を自分の口に含み、チュパッと舐めた後で照れる様子もなく言ってのけた。
　彼が実際に触れていたのはほんの一瞬。けれど、少しかさついた指の感触が、今も唇に残っている気がする。
「なかなかいい味だな」
　私は顔から火が出そうなほど恥ずかしいし、文句のひとつも言ってやりたいところだが、ジンガルドは平然としたものだ。そんな彼を前に、もしかして私の方が過剰反応しているのかと自信がなくなってくる。