姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 ジンガルドは強い視線で真っ直ぐに私を見つめて言い切る。そうして大きな手のひらを私の頬にあてると、その指先でそっと目尻を拭う。
 彼から視線が外せない。彼もまた私から視線を逸らさぬまま、堂々と宣言する。
「今後は君への恋慕を隠さないから覚悟してくれ。大陸全土に認知されるよう、野獣皇帝の執着と溺愛っぷりを存分に知らしめていくつもりだ」
「あっ?」
 頬にあてたのと逆の手でグッと腰を抱き寄せられたと思ったら、高い鼻梁と金の双眸がアップに迫る。形のいい唇が、私のそれへと近づき──。
 えっ、キスされる!?
 咄嗟にギュッと目を瞑る。直後にしっとりとした感触が落ちたのは、唇の端ギリギリのところ。周囲の人たちからは、確実に熱い口付けを交わしているようにしか見えないだろう。
 人々がワッと沸き、最高潮に昂る熱気と歓声で、比喩でなく会場内が揺れていた。
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