姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 だから、私は知らなかった。私の母国が、父たちが、こんなにも愚かだったことを──。

 挙式まで残すところあと一カ月、皇妃教育も佳境を迎えていたその日。
「ねぇ、エリックさん。なんだか、軍施設の方が騒がしくない? それに帝宮もいつもよりバタついているみたい」
 午前中の教育を終えてひと息ついたところで、今日も扉前で控えてくれていたエリックさんに尋ねた。
 帝宮と帝国軍の施設は隣接している。帝宮の敷地がとても広いので、私のいる離宮から直接軍施設は見えない。だが、今日は行き交う兵が普段より多く、漂う空気がどことなく忙しない。
「あー。地方で山賊被害がありまして、その鎮圧に派兵の予定がございます」
「そんなことが! 場所はどこ?」
「テ、テカロン地方です」
 エリックさんは一瞬言葉を詰まらせながら答えた。
「テカロン地方……?」
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