姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 とはいえ、私は既に皇妃と同等の権限を持つ。ジンガルドの政務室を含め、帝宮内の各所に立ち入るのに誰の許しも必要ない。他でない、ジンガルド自身に拒絶されない限り。
 頑とした私の態度に、侍従長はそれ以上なす術なく、その場にとどまった。良心が痛むが、今はジンガルドの政務室へと足を進めた。

 そうして辿り着いた扉の前。
 近くの壁に掛けられたフラワースタンドに目を向けると、アレンジされた花々の中に細長いグリーンの葉が特徴のベアグラスを見つける。
「中の声が聞きたいの。なんとかなるかしら?」
 手を伸ばしそっと葉の表面を撫でながら尋ねたら、ベアグラスが「任せて!」とでもいうようにリンッと鳴り、シュルルーッと葉を伸ばす。
 細長く伸びた葉は器用にうねり、扉の隙間に入り込む。やがて音もなく扉が開き、ほんの数センチほどの隙間ができた。
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