姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
「俺より先にフィアンナと同じテーブルを囲って茶を飲み、肉のサンドイッチとアイスクリームを共に食い、馬に相乗りした罪は重い」
「「は?」」
 ふたり揃って鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
 そんなところまで息がぴったりで、まったくもって面白くない。
「次はない。次に俺より先にフィアンナとの初めてを奪ったら、ただではおかんから覚えておけ」
 目を皿のようにするエリックの鼻先に指を突き立てて宣言したら、なぜか横にいたフィアンナから笑い声があがった。なんと思われようと、ずっと言ってやりたかったことだ。告げたことに後悔はない。
 エリックは俺に深く頭を下げて準備のために離れていき、俺とフィアンナが残される。
 フィアンナはひとしきり笑った後で、スッと表情を引き締めた。そうしてなにを思ったか、突然俺の前に優雅な所作で跪いた。
「フィアンナ?」
 彼女は戸惑う俺の右手を恭しく取ると、自分の額にそっと押しあてた。
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