姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 ところが、俺が声を発するより先にオズモルトがスッと表情を引き締めて口にした。
「ジンガルド様の帝位就任から八年。その御世は帝国史上類を見ないほどに安寧です。だからこそ、皆があなたの妻帯と次代を担う御子の誕生を望む。そろそろ国民を安心させてやってもいいのではないでしょうか」
 いつも飄々として、その心の内を見せようとしない。そんなオズモルトが、珍しくおちゃらけた言動を引っ込めて声にした。
 その言葉の重みが分からない俺ではない。
「フッ。言われずとも承知している」
 俺とて妻帯は皇帝の果たすべき義務と理解しているし、いずれはと思っていた。その時期がついに来たということなのだろう。
「本音を言えば、あなたには好いた相手と添い遂げる夢を叶えてほしいとも思うのです。ですが、いかんせん私にも宰相という立場がありまして。悩ましいところです」
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