姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
「ハッ。好いた相手? なんのことを言っている。俺にそんな相手はいないし、端からそんな夢は抱いちゃいない」
「えっ!? 私はてっきり、ジンガルド様は十二年前に出会った少女のことが忘れられないのだとばかり。違いましたか?」
 オズモルトは心底ビックリしたという顔で、ブツブツと「え、それじゃあ野獣皇帝なんて呼ばれて大陸中で恐れられておきながら、実は童貞なのはなんで? 初恋を引きずってたからじゃないの?」などと独り言ちている。聞き捨てならない単語を拾ったような気もするが、わざわざ指摘して正面切って突っ込まれても面倒なのでスルーする。
「馬鹿を言え。彼女はそういう対象では……」
 ここで「対象ではない」と、言い切れなかった自分自身に少し驚く。
 遠い昔に一度会ったきりの少女。
 あの時の少女と今さらどうこうなりたいと望んでいたつもりはない。だが、もしかすると深層のどこかで彼女の面影を追い求めていたのかもしれない。
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