姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 その時、王宮に続く道から蹄の音が聞こえてくる。来訪者の正体に思い至り、自ずと眉間に皺が寄る。
 ここの離宮は王宮と同じ敷地内とはいえ一.五キロほど距離があり、歩けば二十分はかかる。メイドは歩いてくるが、〝あのふたり〟は私につまらない嫌がらせをするためだけに毎回近衛騎士に馬を引かせてきていた。
 嘆息しながら身を起こした、直後。
「まぁ! マリッサ、あんなところに猿が寝ているわ」
 耳を打つ予想通りの人物の声に、穏やかな時間の終わりを悟った。
 そもそも、なぜ王女でありながら私が離宮に押し込まれ、俗世と隔離された生活を余儀なくされているかと言えば、元凶は父。父が下女に戯れに手を付けて生まれたのが私だ。
< 4 / 223 >

この作品をシェア

pagetop