姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 いずれにせよ、ジンガルドが私のもとを訪れない限り、正体がバレることはない。そして彼は今後も来る気がないだろうから、バレる日は永遠にこない。
 そう考えれば、たいして実害もないのだ。ただ、私が楽しいはずの街歩きに水を差されたというだけで。
「いやいや、それって十分大罪だから! ジンガルド、許すまじっ!!」
 真っ直ぐに向かったベッド。その枕に突っ伏し、ジンガルドへの怨嗟を叫んだ。
 すると、壁掛けのフラワーベースからドラセナがシュルリと伸びてきて、慰めるように頭をさすさすしてくれた。

***

 政務机の上に置いた、世にも美しい赤い薔薇。
 専門の職人にブリザードフラワーに加工させた花は、三カ月が経った今もその美しさを保っていた。
 鮮やかな赤色の花弁を眺め、俺は既に何度目とも知れぬため息をつく。
 間違いない。この花を売っていた女性は、十二年前に出会った少女だ。
< 52 / 223 >

この作品をシェア

pagetop