姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 三カ月前の視察中、多くの人々で賑わう市場の入口を通りすぎようとしたその時、視界の端ではらりと金の光が舞った──否、実際に舞ったのはそれ自体が光を放つかのように淡く輝く金髪だった。
 ハッとして目で追った先に、ほんの一瞬見えた女性の横顔。
 瞬きほどの時間だが、俺が見間違うわけがない。かつて出会った少女が十二年の時を経て成長し、たしかな実体を伴ってそこにいた。
 手を伸ばせば届く距離。気づいた時には駆け出していた。
 実際に、一度はこの手で彼女に触れた。
 目の前の彼女の髪は、当時より艶を増して眩しいほど。折れそうなくらい華奢な体は少し心配になるが、垂れ目がちの童顔は相変わらず愛らしく。
 そして彼女の瞳は、記憶の中のそれと寸分違わぬ水晶よりも澄んだ紫色だった。 
 十二年前もその瞳に心奪われた。同時に、すべて見透かすような澄んだ瞳を前に、俺は浅はかで薄っぺらい己を自覚させられたのだ。
 そっと瞼を閉じる。
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