姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 束の間、少女との出会いに思いを馳せた──。

◇◇◇

 十二年前。
 父の政権下にあったタイラント帝国は汚職や不祥事が蔓延し、水面下で骨肉の後継者争いが繰り広げられ、腐敗しきっていた。
 女好きの父には正妃の他に側妃が三人いて、公妾も常時十人ほどが召し抱えられていた。俺は最も位の低い側妃を母に持つ末子。第八皇子と皇位継承順位が低い上、上の兄たちとはかなり年が離れていた。
 おかげで争いからはやや距離があったのだが、火の粉が降りかかるのを危惧した母が、俺をサドニア神聖王国に留学させた。俺の身を守るため、母が方々に頭を下げ、少ない伝手を頼り、なんとか実現させた留学だったというのは後になって知った。
 当時の俺はそんな事情を知ろうともせず、父や高官らに顧みられぬまま、母によってさらに中央から遠ざけられてしまうことに不貞腐れていた。
< 54 / 223 >

この作品をシェア

pagetop