姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 この国で俺のような黒髪は珍しいから、もしかすると異国からの来客と気づいたのかもしれない。いずれにせよパリッと糊の利いた衣服に磨かれた革の靴。装いからも俺が貴族階級であることは瞭然だろう。そんな俺に、少女は一切物怖じしない。粗野ではないが遠慮のない口ぶりも、改める素振りすらない。
 不思議な少女に興味を引かれた。
「まぁ、そんなところだ」
 わざわざ身分を明かすのも面倒で、適当に濁す。
 その時、グゥっと少女の腹の虫が鳴く。
「なんだお前。腹が減っているのか?」
「そうなのよ。ここのところ、連日のようにいじめっ子がやってきて食事をダメにしちゃうんだもの。踏んだり蹴ったりよ」
「なんだそれは、そんでもない奴らだな。そうだ、よかったら食うか?」
 お茶の時の残りの菓子をたまたまポケットに入れていたのを思い出して差し出せば、少女はパァっと表情を輝かせた。
「わぁー! チョコレートじゃない! いいの?」
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