姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 追従していた騎士の中からひとりがスッと進み出てマリッサにバスケットを手渡す。クラリッサにも別の騎士が渡しているのが見えた。
 ……なに?
 貼り付けた笑顔だけは崩さないまま警戒を強める。
「満足にメイドもやって来なくて、食べるにも事欠いているんでしょう? 可哀想だから、今日のお茶会の残りを恵んであげる!」
 言うが早いか、マリッサが嬉々としてバスケットの中から赤い何かを掴み上げる。
 林檎!?
 一瞬見えた林檎らしき物を振りかぶるのを目にし、やって来るであろう衝撃に身構えた。刹那。
 ──ガンッ。
 側頭部を強打し、ぐわんぐわんと視界が回る。勢いに逆らわず、そのまま地面に倒れ込んだ。
「やだぁ! ちゃんと食べなさいよ」
「ほら、タルトもあるのよ。今度は遠慮しないで召し上がれ!」
 追い打ちをかけるかのように、クラリッサがホールのままタルトをぶつけてくる。クリームたっぷりのタルトが、顔面に当たってベシャッと潰れた。
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