姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
「ふふっ、ありがとう」
 花たちと過ごす時間は癒しだ。
 私はぐるりと庭を見て回り、最後に薔薇が植えられた一角へと足を向けた。
 ……さて、そろそろお昼ごはんが運ばれた頃かしら。薔薇を見たら戻ろうかな。
 ちなみに私の食事は、サンドイッチやワンプレートランチのような軽めのものを毎食部屋に運んでもらっている。『交流日や、陛下に誘いを受けた際の食事は食堂で一緒に』と聞かされていたが、実現したことは一度もない。親切な侍女たちは、普段の食事も食堂でコース料理を食べてはどうかと勧めてくれるが、そんな肩肘張った食事はごめんだ。気軽な今の方がいい。
 薔薇たちをひと通り眺め、そろそろ帰ろうかと足を踏みだしかけたところで、私の部屋の方がざわついているのに気づく。
 どうしたのかしら?
 首を傾げていると、乱暴にテラスに続く窓が開け放たれる音がして、複数の足音と雑多な気配が庭へと迫ってくる。
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