姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 視界の端を個包装されたそれらが掠めた時は、意識せずとも頬が綻んだ。この生活の中、チョコレートなどの嗜好品を口にする機会はそうそうない。
 ありがたいなどと思うわけもないが、それでもせっかくの食べ物を粗末にする気はない。タルトは無駄になってしまったが、林檎だってきちんと食べるつもりだ。
「ねぇ、そろそろ行きましょうか」
「そうね。この子、なにをされても笑っているんだもの。ずっと見ていると薄ら寒くなってくるわ」
 飽きた姉たちが近衛騎士を引っさげて帰っていくと、笑みを引っ込めてむくりと起き上がり、クリームと血に濡れた額を袖で拭う。
 ……やっと行った。頭の弱いふりも楽じゃない。
 だけど私に前世の記憶がなかったら、ふりでもなんでもなくこれがフィアンナの現実だった。
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