婚約破棄されたので、契約母になります~子育て中の私は、策士な王子様に翻弄されっぱなしです~

第3話 婚約破棄から始まる子育て(3)

 屋敷に着いたフローラは、道中の無茶な行動を母親に叱られた。

「もうっ! なんてことするの!」
「ごめんなさい、お母様……」
「二人とも無事だったからいいものの……まあ、今日は疲れたし怪我もしてるんだから、ゆっくり休みましょ」
「ありがとう」

 フローラの母親であるエミリは、フローラからルイトを受け取って抱っこする。

「この子も疲れたでしょう」

 エミリは優しくルイトのダークブラウンの髪を撫で、優しい顔つきをした。

「すーすー」

 ルイトは屋敷に着くまでに、フローラにしがみついて泣きじゃくりながら眠ってしまった。

(ルイト様なりに、申し訳なさでいっぱいだったのよね。何度も寝言で「ごめんなさい」って言っていたもの……)

 いつもディーターの家を訪れた時に数時間ずつ遊んでいただけのフローラは、長時間子どもと一緒にいることの苦労を味わった。
 エミリの抱くルイトの顔を除き、頬をそっと撫でたフローラは、母親に尋ねる。

「私のお部屋、そのまま?」
「ええ、少し掃除した程度よ。それから、一緒に寝たいって手紙に書いてたから、ルイトくんの分のベッドも横に並べているわ」
「お母様、ありがとう」
「ふふ、実際ベッドを動かすのに人手が足りなかったから、お父様がやってくださったのよ」
「お父様が!?」
「ええ、今日はお仕事で戻られないみたいだけど、帰ったらお礼を言ってあげて」
「うん、わかった」

 こうして、フローラは自室へと向かった。
 その日はフローラもルイトもご飯も食べずにそのまま夜中まで眠ってしまった。

 水を飲もうとベッドから出ようとした時、何かに服の裾を掴まれる。
 見ると、眠っていたルイトがうつらうつらしながら、掴んでいた。
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