婚約破棄されたので、契約母になります～子育て中の私は、策士な王子様に翻弄されっぱなしです～

第一章

第4話 子育てはドキドキします！？（１）

　翌朝、フローラは何か頬に違和感を覚えて、ゆっくり目を開けた。
　すると、視界いっぱいにふわふわほっぺをさせたルイトの可愛い顔があるではないか。

「えへっ！」

　フローラが起きたことを知ると、ご機嫌のルイトはにっこりと笑う。

「ルイト様、もう起きたのですか……？」

　フローラは朝が滅法弱い。
　子育てを頑張ると宣言したはいいが、やはり早起きは苦手なようで、目をぱしぱしさせてなんとか起きようとする。

「もうちょっと寝ましょう、ルイト様……」

　そう言ってルイトの背中をポンポンとして寝かせようとするが、もちろん彼は寝ない。
　近くにあったクマのぬいぐるみを渡すと、ルイトは嬉しそうに遊んでいる。

（なんとか起きないと……）

　日もまだ昇りきっていない時間で、フローラはなんとかベッドから出る。

「寒い……」

　暖炉を昨日つけてはいたが、フローラが寝る前に消していた。
　フローラは水を一杯飲むと、カーテンを開けてなんとか体を起こすと、ベッドで遊んでいるルイトに尋ねる。

「ルイト様、朝ごはん食べますか？」
「うん！　たべる！」
「では、ダイニングに行きましょう！」

　ダイニングへは真っすぐ廊下を行った先にある。
　ハインツェ伯爵邸は使用人があまり多くいるわけでなく、フローラたちも爵位が男爵時代の時から、畑で作物を育てたり、自分で料理を作ったりして生活をしていた。
　ダイニングに着くと、その頃からの侍女であるアデリナが朝ごはんの準備をしている。

「お嬢様っ！　おはようございます！」
「アデリナ、どうして？　まだみんなは寝ている時間じゃ……」
「もう、奥様と一緒にお嬢様の育児をしたのは、この私なんですよ！　このくらいの小さな子が早く起きることくらいわかっておりますよ」

（そうか……アデリナは私の面倒をいつも見てくれてたのよね……）

　アデリナはフローラが抱っこしているルイトに挨拶をする。

「ルイト様、おはようございます」
「おはよう……」

　どうやら、少し人見知りをしているらしく、ふいっとフローラの胸に顔を隠してしまう。