うしろの正面だーあれ
そろそろ約束の時間だ。
タケルは鳥籠を、出来るだけ揺らさないように そっと持ち運んだ。
玄関のドアを開けると、そこにはマフラーに手袋、毛糸の帽子に、温かそうな淡いピンクのコートに身を包んだ楓が白い息を吐いて待っていた。
『あ、タケちゃん おはよう!』
『おはよう楓。』
『タケちゃん薄着だね。寒くない?マフラー貸してあげる!』
『いいよ…。』
タケルは、女の子みたいな淡い黄色のマフラーを巻くのが少し嫌だった。
だから拒んだのに、お節介な楓は自分のマフラーをぐるぐるとタケルの首に巻き付ける。
『いいって言ってるのに…。』
そんなことを言いつつ、思いの外 温かいマフラーに、タケルは顔を埋めた。
楓の体温の残るマフラーに…。