うしろの正面だーあれ
『行っちゃった…ね…。』
楓が躊躇いがちに言った。
『うん…。』
もう少しだけ、一緒に居られると思ったのだ。
タケルがチィコを放したら、それがお別れなのだと。
チィコの毛並みを確認するように たくさん撫でて、ちゃんと『さよなら』も言って、そして手放すのだと。
この手で。
だが、実際は違った。
撫でる間もなく、『さよなら』さえ言う間もなく、チィコは飛び立っていってしまった。
自分の元を、逃げるように飛び去ってしまった。
それが大層ショックだった。
『…なぁ、楓。
チィコは俺のこと…嫌いだったのかな…。』
『………………。』
返事が無い。
『楓…?』
楓を見る。
『楓っ…!?楓…っ!!』
頬は紅潮して、息は荒い。
冬であるにも関わらず汗をかいている。
苦しそうな楓の姿に、タケルは焦る。