うしろの正面だーあれ



『遅刻…すか。』



『そうね。少し早めに始めたから遅刻じゃないけど、今度からは もうちょっと早く来てね。』



『申し訳ないっす。』



『さ、早く席に着いて。』



『…ぁぃ。』



そう言って、学ランのポケットに手を突っ込んだまま、憂はあたしの隣にドカッと座った。



あたしは わけが分からないまま、憂の横顔を見ていた。



『…はい、全員出席ね。
じゃあ、プリント1枚ずつ取って後ろに回して。』



先生の目を盗むわけでもなく、憂は堂々と棒つきキャンディーを口に入れた。



ふわりと甘い匂いが漂ってくる。



それは、憂のお気に入りの、いつもの味。いつもの匂い。



あたしはいつも憂の隣に居たから、この匂いがなくちゃ安心できないよ…。



そんなことを思っていたら、何だか切なくなってきて。



涙が出そうになった。



『こら!』



突然の怒声に、あたしはびっくりして肩を揺らした。



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